こんばんは!
本日ご紹介させていただくのは、昨年の年末からブームを巻き起こしている
『漫画 君たちはどう生きるか』(吉野源三郎 (著), 羽賀翔一 (イラスト))
です。
1937(昭和12)年に新潮社から文庫本として発売された『君たちはどう生きるか』。
約80年前に刊行されたこの『君たちはどう生きるか』を漫画版として刊行したのが本書。
2017年8月に刊行されてから、ブームを巻き起こし、今もなお書店ではオススメ棚に陳列されている。
なんで80年前に刊行された本が改めてブームをおこしているのか気になり、手に取ってみました!
<どんな本か>
知的好奇心旺盛な少年「コペル君」と、彼を亡き父親の代わりに見守る教養ある「おじさん」。そんなふたりの心温まるやりとりを通じて、生きる意味を平易に、深く説いた児童向け教養小説の古典が初めてマンガ化された一冊。(Amazonから引用)
コペル君に起こる出来事と"おじさんのノート"
中学生のコペル君に起こる出来事は、特異な出来事ってわけではなくて、シーンは違えど、でくわしたことのある出来事な気がする。
・高いところから、人がアリのように小さく見えたこと
・みんなで悪いことをみないフリをしていること。そしてその中で自分も見ないフリをしていること。
・約束を破って、誰かを裏切ってしまったこと。
ざっくりと大事なシーンで起こることはこんな感じ。
ただ、それに対してのコペル君の推察・おじさんの推察がおもしろい。
フィクション的な描かれ方ではなく、「自分も似たような経験がある」という心当たりがあるからこそ、共感する人が多いのだと思う。
心に残った"おじさんのノート"
作中では、コペル君の言動に対して、おじさんの推察を記載してある「おじさんのノート」があります。
そこに書かれていた文章で私の心に残ったおじさんの文章を残しておきます。
◇ものの見方について
たいがいのひとが、手前勝手な考え方におちいって、ものの真相がわからなくなり、自分に都合のよいことだけを見てゆこうとするものなんだ。
しかし、自分たちの地球が宇宙の中心だという考えにかじりついていた間、人類には宇宙の本当のことがわからなかったと同様に、自分ばかりを中心にして、物事を判断していくと、世の中の本当のことも、ついに知ることができないでしまう。
損得に関わらず、自分を離れて正しく判断していくこと。それが大事。
◇真実の経験について
だんだんにそういう書物を読み、立派な人々の思想を学んでゆかなければならないんだかが、しかし、それにしても最後の鍵は、ーコペル君、やっぱり君なのだ。
君自身のほかにはないのだ。君自身が生きてみて、そこで感じたさまざまな思いをもとにして、はじめて、そういう偉い人たちの言葉の真実も理解することができるのだ。…
常に自分の体験から出発して正直に考えてゆけ、ということ。…ここに誤魔化しがあったら、どんなに偉そうなことを考えたり、言ったりしても、みんな嘘になってしまうんだ
…君自身が心から感じたことや、しみじみと心を動かされたことを、くれぐれも大切にしなくてはいけない。それを忘れないようにして、その意味をよく考えてゆくようにしたまえ。
どんなに偉い考え方を受け売りして、話しても自分の体験したこと、自分の体験から考えてたどりついた思想が大事、ということ。
◇人間であるからには
自分が消費するものよりも、もっと多くのものを生産して世の中に送り出している人と、何もしないで、ただ消費ばかりしている人間と、どっちが立派な人間が、どっちが大切な人間か、ーこう尋ねてみたら、それは問題にならないじゃないか。
生み出してくれる人間がいなかったら、それを味わったり、楽しんだりして消費することはできやしない。生み出す働きこそ、人間を人間らしくしてくれるのだ。
…学問の世界だって、芸術の世界だって、生み出してゆく人は、それを受け取る人々より、はるかに肝心な人なんだ。だから、君は、生産する人と消費する人という、この区別の一点を、今後、決して見落とさないようにしてゆきたまえ。
「生み出す働きこそ、人間を人間らしくしてくれる」。
◇人間の悩みと、過ちと、偉大さについて
「誤りは真理に対して、ちょうど睡眠が目覚めに対すると、同じ関係にある。人が誤りから覚めて、よみがえったように再び真理に向かうのを、私は見たことがある」
これはゲーテの言葉だ。
僕達は、自分で自分を決定する力を持っている。だから、誤りを犯すこともある。しかしー
僕達は、自分で自分を決定する力を持っている。だから、誤りから立ち直ることもできるのだ。
起こる出来事はすべて自分の心が決めている。すべてが自分次第、ということ。
最後のコペル君の考えたこと
世の中を回している中心なんて、もしかしたらないのかもしれない。
太陽みたいにたったひとつの大きな存在が世の中を回しているのではなくて、
誰かのためにっていう小さな意志がひとつひとつつながって
僕達の生きる世界は動いている
「世界を回している中心なんて、ないのかも」
テレビや新聞にうつる偉い人や有名人。目立っている人に対して、「いいな、すごいな」と思うことがある。
ただ、そんな人も大きな流れの中においてはちっぽけな存在で、今の自分と一体何が違うのだろうか。その人がいなくなったって世界はなにも変わらない。
そんなことを考えていたら、『僕たちは世界を変えることができない』を思い出した。
あの作品は、"ボランティア"というテーマに向き合って、「世界を変えたい」「貧しい人を救いたい」という思いに対しての「でも本当に変えられるのか?」「そんな大きいことできるのか?」という疑問に対して向き合っていた。
最後に主人公は語る言葉。
僕たちは世界を変えることはできない。
でもあの日、あの瞬間、子供たちが笑って、僕たちが笑ったことだけは真実だ。
それを思い出して、改めて、この大きな流れの世界を変えることはできないからこそ、
自分に関わってくれる人を大事にすべきだと思ったし、
自分の意志に対して、自分の欲に対して正直でいたいと思った。
自分で考え、自分で決める。
だからこそ、「君たちはどう生きるか」ていう投げかけで終わる一冊だったのかな。
そして、決まりきった生き方をしなくて良い多様性の時代になったからこそ、改めて80年前の本がブームを巻き起こしたんだな、と思いました。
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